大阪高等裁判所 平成8年(う)549号
右の者に対する所得税法違反被告事件について、平成八年三月二一日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、原審弁護人から控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。
検察官 糟谷道彦 出席
主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人細谷明作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は検察官糟谷道彦作成の答弁書に、各記載のとおりであるから、これらを引用する。
論旨は、量刑不当の主張であり、被告人を懲役二年六月(三年間執行猶予)及び罰金五〇〇〇万円に処した原判決の量刑は、著しく高額な罰金刑を併科した点で不当であるというのである。
そこで調査すると、本件は、不動産の売却を仲介した被告人が、売主である三名の所得税確定申告手続に関与し、数名と共謀して所得税を免れたという事案である。ほ脱税額が合計六億四八〇〇万円余りと巨額であり、ほ脱率も三名分合計の平均で約九一・五パーセントと高率であること、また被告人は、本件脱税の発案である上、本件脱税に関与した報酬として一〇〇〇万円余りを受領したほか、他の関与者に対する謝礼である旨偽って一億円余りの金員を取得したことなど、本件の規模及び態様、被告人の関与の程度並びに利得状況当に照らすと、被告人の刑事責任が重大であることは、原判決が量刑の理由中で詳細に説示するとおりである。
所論は、懲役刑と罰金刑とが併科される趣旨は、犯人が得た不法な利益を剥奪するとともに、これによって特別予防及び一般予防の効果を期するところにあるから、納税義務者でない被告人に対し、所得税法二三八条二項のいわゆるスライド制を適用すべきでないとか、被告人が得た利得のうち一億円余りは、納税義務者である共犯者らから騙取したものであるから、これを罰金額に反映させるべきではない、などというのであるが、被告人は本件脱税によって利益を得ようと考え、実際にも合計一億一〇〇〇万円余りを利得したものであるから、右利得額を罰金額に反映させることは、所論の特別予防及び一般予防の見地に照らしてみても、何ら不当なこととはいえず、所論は採用できない。
そうすると、被告人が当初から多額の報酬を得ることを目的としていたわけではないこと、本件後、被告人の所有する不動産に被担保債権額を一億二〇〇〇万円とする抵当権を設定し、さらに被告人の関係する会社の不動産を売却する手続を進めるなどして、右利得を返還する努力を続けていること、その他被告人の資力や反省の情など所論指摘の事情を十分考慮しても、原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえない。論旨は理由がない。
よって刑訴法三九六条により、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 内匠和彦 裁判官 榎本巧 裁判官 田邉直樹)
控訴趣意書
所得税法違反 被告人 野崎泰秀
表記事件につき、平成八年四月四日大阪地方裁判所が云渡した判決に対し、弁護人が申立てた控訴の理由は左記のとおりである。
平成八年八月六日
右被告人弁護人
弁護士 細谷明
大阪高等裁判所 御中
記
第一 控訴申立ての趣旨
原判決は「被告人は、
第一 自己が所有していた不動産を譲渡した藤井好子から依頼を受け、同人の所得税確定申告手続に関与したものであるが、同人並びに同人から依頼を受けて同申告手続に関与した鈴木彰、岡澤宏及び平井龍介と共謀の上、右藤井好子の所得税を免れようと考え、同人の平成五年分の総合課税の総所得金額が二六一五万〇九一七円、分離課税の長期譲渡所得金額が一四億〇一〇八万六四三六円で、これらに対する所得税額が四億二八五〇万二五〇〇円であったにもかかわらず、譲渡収入の一部を除外するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成六年三月八日、所轄豊能税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総合課税の総所得金額が二一〇一万六七一六円、分離課税の長期譲渡所得金額が一億〇五一五万〇四七六円で、これらに対する所得税額が三七一五万四七〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成五年分の所得税三億九一三四万七八〇〇円を免れ
第二 自己が所有していた不動産を譲渡した酒井君子から依頼を受け、同人の所得税確定申告手続に関与したものであるが、同人並びに同人から依頼を受けて同申告手続に関与した鈴木彰、岡澤宏及び平井龍介と共謀の上、右酒井君子の所得税を免れようと考え、同人の平成五年分の総合課税の総所得金額が六〇七万五六四〇円、分離課税の長期譲渡所得金額が一〇億五七六三万〇二五七円、退職の所得金額が八九〇万円で、これらに対する所得税額が二億二〇八八万七三〇〇円であったにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成六年三月八日、所轄の前記豊能税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総合課税の総所得金額が二三一万四七五三円、分離課税の長期譲渡所得金額が一億一〇八六万三五三九円、退職の所得金額が八九〇万円で、これらに対する所得税額が二〇八八万六七〇〇円(ただし、申告書には誤って二〇八七万六七〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成五年分の所得税二億〇〇〇〇万〇六〇〇円を免れ
第三 自己が所有していた不動産を譲渡した藤井輝夫から同人の所得税確定申告手続を依頼され、同人の代理人として関与したものであるが、鈴木彰、岡澤宏及び平井龍介と共謀の上、右藤井輝夫が右所有不動産を売却したことに関して同人の所得税を免れようと考え、同人の平成五年分の分離課税の長期譲渡所得金額が一億九八四八万円で、これに対する所得税額が、五九三九万三一〇〇円であったにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成六年三月八日、所轄西宮税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の分離課税の長期譲渡所得金額が八五〇万円で、これに対する所得税額が二三九万九一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成五年分の所得税五六九九万四〇〇〇円を免れ
たものである。」
との公訴事実と同一の事実を認定した上、被告人を懲役二年六月(執行猶予三年)及び罰金五〇〇〇万円に処したが、原判決の量刑は、以下詳述するとおり、懲役刑に加えて納税義務者ではない被告人に、スライド制を適用して著しく高額の罰金刑を併科した点において量刑重きに失し不当であるから、到底破棄を免れない。
第二 公訴申立の理由
一 罰金併科等の趣旨と実情について
1 所得税法第二三八条は、その第一項において、所得税の逋脱犯につき、五年以下の懲役若しくは、五〇〇万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると規定し、その第二項において、逋脱した所得税の額が五〇〇万円をこえるときは情状により、その罰金は五〇〇万円をこえ、その免れた所得税の額に相当とする金額以下とすることができる旨罰金刑につきいわゆるスライド制を規定している。
ところで、本法及び同旨の規定を置く法人税法違反等直接国税逋脱事犯について、罰金刑が懲役刑と併科される趣旨は、犯人から犯罪により得た不正の利益を剥奪するとともに、相応の金額を剥奪することにより、不法利益の取得を目的とする犯罪行為が経済的に引き合わないことを犯人に強く感銘させ、世人に悟らせる点にあるとされている(東京高等裁判所平成六年三月四日、大阪高等裁判所平成五年四月二七日、判例時報一四九九号一三五頁)。
そして、直接国税逋脱犯について、併科すべき罰金刑を本来の法定刑を超えて、逋脱額に相当する金額を上限とすることができるとする罰金スライド制を設けた趣旨は、大規模な逋脱事犯について、五〇〇万円を上限とする罰金刑では逋脱犯、特に懲役刑に科させることのない法人には、何ら苦痛を生じさせるものではないので、逋脱額の範囲内で逋脱によって犯人が得た不法な利益を剥奪し、罰金刑の併科による特別予防、一般予防の効果を期待しようということにあるものと解されるが、このように本来の法定刑に高額の罰金刑が規定されているのに、その法定刑を超えて更に高額の罰金刑を科することができるとするスライド制を採用することの合理性については傾聴すべき批判がある(佐藤英明、脱税と制裁三〇八頁以下)。
しかし、少なくとも法人については十分な合理性を持つものと思われ、また、不法利益の帰属者である納税義務者たる自然人についても、理解できないわけではない。
2 しかして、納税義務者自身が行為者である場合における所得税逋脱犯に対する科刑の実情を見ると、概ね逋脱額の大小に見合う懲役刑が科せられているほか、殆ど例外なく逋脱額の一定割合=平均的には二〇パーセント強=の罰金刑が併科れるという運用が確立されていることが認められる(前掲、東京高等裁判所判決)。
しかしながら、これは処罰の対象が、納税義務者ではなく、脱税による不法な利益がそのまま帰属することのない納税義務者以外の関与者について、そのまま当てはまらないことは、法の趣旨から考えて明らかである。
ひるがえって、直接国税逋脱事件における納税義務者以外の行為者等関与者に対する科刑の実情を見ると、法人税、所得税を問わず、通常の場合は懲役刑のみが科され、罰金刑が併科されておらないことは、裁判上顕著な事実である。
3 ところが、昭和六〇年ころから現われて来た暴力団等によるいわゆる脱税請負事件では、これらの請負業者が法外の高額報酬を取得しているところから、請負業者に対し、懲役刑に加えて罰金刑を併科するようになっている(前掲、脱税と制裁四三頁以下)。
そして、これらの事犯についても、五〇〇万円を超える罰金刑が科される事例が増加しているが、これらは、併合罪加重による合算額の犯意内での科刑であり、罰金スライド制を適用したものでないことは、当該事案における逋脱額の大小に応じた罰金が科されていないことからも明らかである。
4 もともと、これらの脱税関与者は、納税義務者が脱税を犯すにつき欠くことのできない役割を果たしたこと、そしてその役割の大小に応じて非難されるのであり、得た報酬の大小は単なる情状に過ぎないのであるから、得た報酬利益を剥奪するために、納税義務者以外の関与者について罰金のスライド制を適用することは、明らかに法の趣旨に反するものといわなければならない。
二 被告人の犯行関与の程度について
1 被告人は納税義務者ではなく、藤井好子ら納税義務者の所得税逋脱に関与したものである。
被告人が本件に関与するに至った経緯は、原判決が量刑の理由で判示しているとおり、藤井好子らの不動産売却の仲介をしたことから、その不動産売却に伴う同人らの所得税を安くすることができれば、同人らに被告人の仲介する不動産を購入してもらうことができ、そうすれば被告人が仲介手数料を得ることができるとの思惑から、従来から右不動産売却について相談をしていた当時税理士であった平井龍介に対し、右不動産売却にかかる税金の額を低く抑えて申告したい旨本件脱税を依頼して鈴木彰を紹介してもらう一方、藤井好子及び酒井君子に対して脱税を持ち掛けてこれを了承させた上、右両名に代わって、本件脱税の金額等につき鈴木及び平井と交渉を行って来たもので、その意味では、本件脱税において重要な役割を果たした者の一人であると言わざるを得ないのであるが、高額で大胆な本件脱税の犯行は、脱税請負業者である鈴木が、すべてリードして実行に移させたもので、被告人は、この鈴木と税の専門家である平井の指示に従って行動していた一介の不動産業者に過ぎず、悪質な脱税請負業グループに属するものではない。
2 また、脱税報酬の面からみても、被告人は、鈴木の四億五千万円は論外として、岡澤の五千万円、平井の二千万円に比しても遥かに少額の一、〇八二万円を得ているに過ぎず、最も役割が小さかったことを示している。
ただ、被告人は、原判決が指摘するとおり、右の謝礼を受領したほかに、藤井好子及び酒井君子から鈴木に対する謝礼であると偽って約一億三四〇万円の交付をうけて利得しているのであるが、もちろんこれは脱税報酬ではない。
3 被告人は、当初からこのような多額の報酬を当てにして、本件に関与したものではなかったが、鈴木に脱税報酬を渡す段階になって、鈴木からの指示で、鈴木に渡すことを予定して、藤井好子らに準備させていた鈴木個人への報酬分が、自民党への納入金と込みになったということで、鈴木に渡す必要がなくなったことから、それを自己が取得するに至ったものである(平成七年四月二八日付被告人の検面一四丁)。
このように、被告人は、本件脱税に関与した機会に、たまたま前記事情から、右両名を騙して多額の金員を騙取するに至ったものであり、右行為は右両名に対する明らかな背信行為であるから、その点では強く非難されるべきであるが、これは個人的法益である他人の財産権の侵害であって、租税債権という国家の財産権を保護法益とする脱税事件の評価上は、本来無関係な事情であるというべきである。
4 以上のとおり、被告人は、職業的脱税請負人と納税義務者との橋渡しをした後は、納税義務者のために鈴木らの指示に従って行動していただけの単なる走り使いに過ぎないのであって、本件脱税への関与だけについてみれば、その科刑としては、罰金の併科はともかくとして、罰金額にスライド制を適用すべき事案ではないことは疑問の余地がない。
三 量刑不当について
1 原判決は、被告人が本来の報酬のほかに約一億円を騙し取った点について、「被告人は鈴木から同人に対する報酬を含む金額を指定されてこれを持参するよう要請されていたにもかかわらず、藤井好子及び酒井君子に対して、右金額に加えて鈴木に対する報酬名下に右約一億円もの高額の金員を上乗せして請求し、これを自ら利得していたものであって、その利得の方法についても強い非難を免れない。」と判示し、懲役二年六月(三年間執行猶予及び罰金五千万円という脱税への関与だけでは到底考えられないようて重刑を科している。
原判決が一億円の騙取を理由にして右重刑を科したことは、原裁判所が被告人と共同被告人の関係にあった他の被告人に対し云い渡した量刑をみると一目瞭然である。
すなわち、原裁判所は、
被告人平井龍介に対し懲役三年(四年間執行猶予)
及び罰金七〇〇万円(三月二一日云渡)
同藤井好子に対し懲役二年四月(三年間執行猶予)
及び罰金七五〇〇万円(七月一五日云渡)
同酒井君子に対し懲役一年六月(三年間執行猶予)
及び罰金三〇〇〇万円(七月一五日云渡)
の刑を科しているのであるが、被告人に対する量刑は、右納税義務者両名と対比しても、また、本件のほか三件の脱税に関与している平井税理士との比較においても、格段に重くなっている。
ところで、この詐欺の事実は、本件脱税事犯とは併合罪の関係にあり、検察官において、別罪として訴追可能なものであったが、検察官は、諸般の情状から、これを詐欺罪で立件起訴することはしないで、本件の情状にとどめたのである。
したがって、判決においても、この点を考慮し、懲役刑の刑期に反映させることは当然であり、その意味において、原判決が被告人を懲役二年六月に処したことは止むを得ないものと思料するが、併科された罰金刑にスライド制を適用して、本来の法定刑を一〇倍も超える五〇〇〇万円もの罰金を科したことは、全く合理性を欠き失当である。
いうまでもなく、詐欺罪には罰金併科の規定はなく、犯人がいくら多額の不正て利益を取得していても、判決によってその利益を剥奪することはできないのであり、刑事裁判では、被害の弁償により、犯人が利得した不法利益を吐き出したか否かを一つの情状として懲役刑の刑期等を定めているのである。
原判決のように、罰金を科することのできない犯罪と併合罪の関係にある犯罪にたまたま罰金併科の規定があり、しかもそれに罰金のスライド制があるのを奇貨として敢えてスライド制を適用し、高額の罰金を科し、それによって、本来刑罰では剥奪できない詐欺により取得した不法利益を剥奪しようとするのは、明らかに罰金スライド制の趣旨に反するものであり、罪刑の均衡を失し不当であるから破棄を免れない。
2 仮に、罰金にスライド制を適用して、高額罰金を科したことの不当性についての議論をしばらくおいて、罰金額そのものについてみても、原判決が科した罰金額は事案の内容に徴し、また関係被告人との対比においても、余りにも高額に過ぎて失当である。
(一) まず、被告人が本件脱税について果たした役割は、前記二に詳述したとおりである。被告人は脱税請負人グループに属する者ではなく、納税義務者の側に立って使い走りをしていたものであり、犯行そのものについては従属的地位にあったものである。
次に、被告人が得た脱税報酬は一〇八二万円に過ぎず、これとは別に約一億円を騙し取って利得しているが、これは前記二で先述した経過で取得するに至ったものであるところ、この点は、被告人が「会社の資金繰りに困っていたこともあり、藤井さんらが脱税によって、こんなに多額の金を自分達の手に残すことになるのがうらやましくなると同時に、自分もその仲介役をするのだから、その一部を取り込んで分け前にあずかろうという考えを起こした。」旨供述する(前同検面一四丁裏)とおり、本件犯行を進めるうちに陥った金銭感覚の麻痺から出た偶発的な所為であり、決して初めから多額の報酬を目的としたものではなかったのである。
しかも、被告人が取得した右報酬金等一億一〇〇〇万円余の利得については、鈴木による一連の脱税事件が発覚するに至った直後、被告人は、藤井好子及び酒井君子に対し全面的に事情を打ち明け、謝罪した上で、原判決が判示するとおり右の一億一〇〇〇万円余りに加え、右両名から受取っていた正規の仲介料五〇〇万円及び右両名が被告人の提案に基づき平井に対してなした謝礼二〇〇〇万円を含む一億四〇〇〇万円について返還を約して、その旨の借用書を差入れた上、後日平井側が藤井好子らに対して返却した二〇〇〇万円を除いた一億二〇〇〇万円について、被告人所有のマンションに抵当権を設定しており、さらに、右一億二〇〇〇万円の返済に充てるべく、被告人の関係する会社の不動産を売却する手続を進めていて、近く全額返済の見通しも立っており、その結果として脱税報酬を含めいわゆる不法な利得は全額藤井好子らに返還され、被告人には、現実に何らの利得が存在しないのである。
その上被告人は、本件各事実を素直に認め、反省していること、業務上過失傷害による罰金一犯以外に前科がないことなど、量刑上被告人に有利な事情が認められるのであるから、被告人に懲役刑に対し、執行猶予の恩典が認められたことは当然としても、高額の罰金負担能力の乏しく、かつ不法利得の存在しない被告人に対し、被告人が利得した額の四三、七パーセントに当たる、罰金五〇〇〇万円を科したことは、余りにも酷に過ぎるものといわなければならない。
(二) ところで、関係被告人に対する罰金額について検討すると関与者である平井は、他の三件を含めての利得額二九五〇万(同人に対する判決書二五丁)に対し、二三、七パーセント、納税義務者である藤井好子に対しては、逋脱税額の一七、八パーセント、酒井君子に対しては同じく一五パーセントに当たる罰金刑が併科されているが、不法利益の帰属する納税義務者との比較においてはもとより、同じ関与者でも税の専門家である平井と比較しても、二倍もの高率に当たる異常な高額罰金となっているのである。
裁判実務に携る者としては、原裁判所が脱税請負人でもない被告人に対し、何故このような高額罰金を科したのか全く理解に苦しむところであり、いずれにしても原判決の量刑は重きに失するから到底破棄を免れないものと信ずる。
第三 結論
以上述べたとおり、原判決の罰金刑は、どのような観点から見ても、余りに高額に過ぎ、重きに失することは明白であるので、これを破棄した上、更に適正な裁判を求めるため、本件控訴に及んだ次第である。